劇団酒呑童子Vol.3“他人の言葉”
『守ってみてよ』
脚本・演出 末山孝如
―女、朗読をしている。横には男が居る。
「君を守る」「守るから」「守ってやる」
…「君を守る」…「あなたの口癖」
「“守る”とかいうけど、私が会社で上司から暴言やら小言やら言われている時にあなたは横にいなくて私を弁護出来ないし、通勤電車で痴漢にお尻を触られてる時もあなたは横にいなくて、もし私が何か重大な病気に罹って死ぬかもしれなくなっても、あなたは医者じゃないから治せない。それでも「守る」というなら、どう守ってくれるのか教えて欲しい。もしもの時に守ってくれるだけなら、警察やセコムや自衛隊の方が幾分安心だし。慰めをくれたって後の祭りで、何の足しにもならない。
それとも、結婚してくれて私は主婦になって、殆ど家にいて、たまに友達とお茶でもしにいって、何事も無い日々を送る事になったら、それが守られてるってことなの?
なんか違うじゃない。ねえ。答えて。」
黙る二人。何も―言わないのか、言えないのか、言いたくないのか。降りる沈黙。
―朗読劇、いや「朗読をしている人の劇」。
語るは“他人の言葉”。ここにある息遣いは、声は、自分のもの。
冷たい手触りの内省的な言葉が、時に饒舌に、しかし曖昧なイメージを紡ぎ出す。
語られる断片、つまずく声、眉間に寄る皺。間。
読み語る女と男、書かれた女と男、その二人、或いは四人、その間にあるものが何なのか、
それは誰にもわからないのかもしれない。
